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須方書店からのお知らせ

2020.04.15

店主の徒然日記「読書時間②」

 この機会に、読もうと思っていた名作を開いてみた。 ただ毎回挑戦するたびに、1.2ページ読んで本を閉じてしまう。 それは何故か、出だしの文章に満足してしまうから。『草枕』で云うと、 山路を登りながら、こう考えた。で始まる導入部は鮮烈な印象を受ける。

 それと『日本橋』。

「お客に舐めさせるんだとよ。」

「何を。」

「其の飴をよ。」

 腕白ものの十ゥ九ッ、十一二なのを頭に七八人。春の日永に生欠伸で鼻の下を伸ばして居る、四辻の飴屋の前に、押競饅頭で集った。手に手に紅だの、萌黄だの、紫だの、彩った螺貝の独楽。日本橋に手の届く、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のやうに白く乾いて、薄い陽炎の立つ長閑さに、彩色した貝は一枚々々、甘い蜂、香しき蝶に成って舞ひさうなのに、ブンブンと唸るは虻よ、口々に喧しい。

 此の聲に、清らな耳許、果敢なげな胸のあたりを飛廻られて、日向に悩む花がある。

  著者の比喩表現に、くらくらと酔ってしまう。今回はそうならないよう、腰を据えて読まないと。

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