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須方書店からのお知らせ

2021.05.14

帯文に惹かれて

 内容はわずか1.2ページの短文、エッセイ。短いながらもハッとさせられる言葉が散りばめられている。特に『カゼの効用』と付けられた文章が良かった。(以下引用)

 「夜中に目がさめる。明かりをつけないでいよう。まっ暗な中じっとしている。それはたまにはいいことだ。ボンヤリした、とりとめのない、中途半端なこの生きもの。半ばの悟りと半ばの欲望、やすらぎが半分に焦燥が半分、それが掛け値なしの自分ってものだ。沈黙しているからって何の認識もひらけないが、しかしやはりじっとしていよう。さなけない自分のありようを、暗闇のなかで、よく見ておくがいい。ごまかしようのない実体、そのとおりのオマエがいまここにいる。」

 「のべつウトウトしていた。そんな気がする。やがて朝がくる。鼻がまっ先にかぎとった。あきらかに朝の匂いだ。澄んだ空気と、草花の香りのまじり合ったやさしい匂い。目が本能的に青空を探している。そして春の近さを思わせる赤味をおびた太陽と緑がかった空を見つけた。手足がいそいそと着替えをする。三月ヤヨイ、花のころなどといった紋切り型のことばが、なぜか意味ありげに頭をかすめたりする。こんなふうに生きてるだけでもシアワセってものだ。」

                             

「やっぱしムダってものは大切だなァ。お灸をすえられてよくわかった。もとの初心に帰って、これからは…そんな思いも二、三日で、またいつのまにかモトの木阿弥、一度で目がさめるのは、よほどの立派な人物だ。三度、四度くり返す。おもえば私もこれまで、カゼをひいた回数だけ回心をくり返してきた。」

 この文章を読んで、ある方の文章を思い起こさせられた。それは、串田孫一著『光と翳の領域』その中の序文の一節が僕の中で共鳴した。(以下引用)

 「この、まるで恩寵のように荘厳で、天国的な色彩を見せてくれる光と翳の領域で、私は恐らく自分をより鮮明に見るために書いているのだろう。振り返って棄てるべきもののやや多過ぎたことを幾らか後悔はしながらも、それも自覚という最も困難な発見に役立っていたのかも知れないと思って、今は怯える心を鎮める。自負と卑下とのゆさぶりに、私の機能は低下し、判断はまたしても不確かなものとはなるが、それがまた、改めて、繰り返し私自身を一層誤りなく観察し、発見し続ける意慾を湧かせる。」

 何かしら迷っている時、先人たちの言葉が道標になる。

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