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須方書店からのお知らせ

2019.10.10

店主の徒然日記「出張買取」

 先日、出張買取に出かけました。朝10時から始めて、終わったのが16時だった。蔵書の持ち主だった旦那さんは、ある大学の英米文学の先生をしていらした。専門がウィリアム・フォークナーで、フォークナーの著作・評論が洋書で半分を占めていた。その他にも、同時代・系統のあるアメリカ文学者たちの書籍が多数あった。

 あまり個人的な事は聴かない方がいいかと思い、奥様に旦那さんの事を詳しく尋ねなかった。言われなくとも、そうなんだろうと思っていた。今回自分が旦那さんの書斎の本たちを片付けはじめて、奥様は10年近くこの部屋は開かずの間だったのよとおっしゃった。段々と本棚から本が無くなってくると、奥様は寂しくなってきちゃうわねと僕にもらした。主人が大切にしていた本だから、やっぱり少しだけ残しておこうかしらと、付箋が一杯貼られた本に手を添えて呟いた。それじゃ、僕と一緒に整理をしましょうと声をかけた。旦那さんが大切にしていた証である、付箋が貼られている本だけ残しましょうと提案した。

 10年近く、手付かずだった旦那さんが愛用していた机の上に積み重なっていた書類を、奥様は1枚1枚確認して、ゴミ袋につめはじめた。誰かが掃除をしはじめると、つられて躊躇いなく捨てられるわねと口を開けて笑っていた。

 半分以上の本が片付いて、1つの本棚がキレイさっぱりになって、机の周りもキレイになって、2人とも小休止をしていたら、奥様から一言。こんなに一杯捨てちゃって、今夜夢で主人が出てきそう。大事な書類をどこにやったのかって怒られそう。そう言う彼女の声にときめきを感じて、僕はきっと出てきてくれますよと返事をした。

 僕が古本屋として、出張買取に出かけ始めた5年前。ある1軒のお宅にお邪魔した。それは電話での依頼だった。依頼主の方は、一度もお店に来た事がなく、お店のチラシを見て連絡をくれた。初めましてと挨拶して、すぐに本棚の方へ案内されるのかと思いきや応接間へ案内された。そこで、コーヒーをご馳走になりながら、依頼主の方と15分ぐらいお話をした。依頼主の方から、どうして古本屋になったのか、どういう本との付き合い方をしたかと聴かれ、依頼主からは今回手放すと決めた本の思い出を語ってくれた。思いを語り終えて、それではお願いしますと本棚がある部屋へ通された。査定して本を括り車へ運び終わって、帰り際、依頼主からあなたに頼んで良かったわと言ってくださった。その一言が僕には、なによりの喜びだった。

 いつだったか本屋で立ち読みをしていたら、印象的な言葉を見つけた。ミシマ社から出版された『善き書店員』。ある書店員さんの一言。「 本屋という職業は、お腹はいっぱいにはならないけど、胸はいっぱいになったかなという仕事かな 」と答えていた。

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